絶対読んでほしい!名作漫画レビューその9『症年症女』

漫画

これは 少年(ぼく)が 少女(このこ)を 殺すまでの物語―――。

はい、というわけで絶対読んでほしいと書いているのに万人におすすめできない漫画ばかり紹介しているネタバレあり感想ブログの時間です(笑)
今回紹介するのはジャンプスクエアで2016年2月号から2017年5月号まで連載されていた『症年症女』(少年少女では無い)です。全3巻。
『めだかボックス』の西尾維新(原作)、暁月あきら(漫画)が再びタッグを組んで生まれた漫画です。

最初に言ってしまうとこれは人を選ぶ漫画であり万人におすすめできる漫画ではありません!
それでも、ブログで紹介しようと思ったのは表現がとても斬新で『12歳になると必ず死ぬ』というワンアイディアがとても面白かったからです。

1.『症年症女』の特徴

『症年症女』には他の漫画では見られない表現手法が使われています。
ここでは特徴ともいえるその表現手法を記載します。

①登場人物に名前が無い
この漫画の登場人物には名前がありません。
それも、主人公の病気が相手の個性を感じることが出来なくなるものであり、”名前”という概念すらも個性にあてはまるからだと考えられます。
なんと主人公となる少年少女にすら無く、作中相手を示す言葉は全て「少年くん」と「少女ちゃん」で示されます。
(名前が明らかになるのは最終回であり、たった一回しか記載されません)

②セリフが塗りつぶされる。
驚くことにほどんどの人物のセリフにモザイク加工が行われ何を言っているのか認識することすらできません。
例外となるのは少年くん、少女ちゃん、毒(ドク)の言葉のみはモザイク加工がされずに読み取ることができます。

これは、主人公にとって興味のない、無個性の人物は見えなくなるという病気を作画で表しているためです。
対して少女ちゃんは生まれながらにして天才で強烈な個性を放っているから同じ病気の少年くんもモザイクなしで認識できるようです。
ドクの言葉がわかるのは・・・なんでだろう。顔こそはモザイクがされているものの言葉は認識できる存在。やはりこの病気について知識があるからなのでしょうか?

もうね、セリフが読み取れないというのは漫画としては致命的でストーリーがわからなくなるはずなのに、
なぜか理解できるという不思議さ。これが西尾維新マジックなのかもしれません(笑)

ちなみに物語は少年くん視点で進むので少年くんに感情移入しやすいかと思えば、少年くんはDQNなので全く感情移入できません!
(自分が中学生であれば感情移入できたかも!?)

③12歳になると必ず死ぬ
個性の無い人間が見えなくなり、12歳になると必ず死ぬ、これが少女ちゃんが生み出した病気であり少女ちゃんと少年くんが感染した病気です。
この病気に罹患したおかげで個性が無い(と思っている)少年くんが初めて他人には無い個性を得たと喜び、自分の病名を名付けてもらうために病気で死んでもらっては困る=少女ちゃんを殺すという物語が生まれます。
このような考えに至るにあたり、少年くんはマジキチであり重度の中二病なのです(笑)

「見た目が無個性ならいうことも無個性だな。やることなすこと前に倣え。
そんな無個性でお前らどうして死にたくならないんだ?
少なくとも僕はもう何年も死にたくて死にたくてしょうがないのに。
どうせ全員区別できない類例なのにその中で上だ下だを競い合う愚かさには吐き気がする」

上記は少年くんの名言。
彼はもう重度の中二病であることが伺えます。

対して少女ちゃんは稀にみる天才であり、この病気を生み出したのも他人を無個性と見定めることで移植手術などで拒絶反応を起こさなくさせるため。
といっても、この病気には無個性の人々が認識できなくなる以外にもデメリットがあり、拒絶反応を起こさないためにすべてを受け入れる状態、いわば抗体が無いので病院から出られなかったりします。
その他に重要な要素が「12歳になると必ず死ぬ」代わりに「12歳までは絶対に死なない」という側面も生まれ不老不死の可能性も帯びています。

この病気の存在が『症年症女』を面白くする要素であるといっても過言ではありません。

2.あらすじ – 少年が少女を殺すまでの –

物語はとある病院にて、少年がベッドの少女にハサミを突き立てる場面と「これは 少年(ぼく)が 少女(このこ)を 殺すまでの」というモノローグから始まる。
世の無個性さに悩む「少年」には一つとんでもない個性があった。それは人の個性が塗り潰されて認識できず、12歳で死ぬという奇病にかかっているということ。
少年はその病で死ねば世に名を遺す無二の個性となると考えていたが、そこに最大の障害が立ちはだかった。
それは自分と同じ、しかも自分より先に死ぬ「少女」の存在。かくして、少年は自分が最初の死者となるべく少女を奇病以外の理由で殺すことを目論む。
しかし、そこには第三者の思惑が蠢いていた。

上記はWikiからの引用ですが、もうこれがお話のストーリーです。
終始、少年くんは奇病の個性を得るために少女ちゃんの殺害を目論見、失敗。ドクが絡んできつつ、その繰り返し。
最終的に少女ちゃんは病気以外の理由で亡くなります。決して少年くんに殺されたわけではありません。

最後は少年くんも病気(新陳代謝が行われなくなり老衰)で死亡し、2人の名前にちなんで山井症と名づけられました。
そしてエピローグでは山井症は不死の病ではなくなっていたのだった・・・。

3.登場人物

登場人物は少年くんと少女ちゃん、あとはドクを押さえておけばOK
その他の人物はモザイクされてるし名前も出てこないし印象も薄いので(笑)

・少年くん(山井 生)
本作の主人公。自分を含めた世の中の人々の無個性さに嫌気がさしていた11歳の少年。
かなりのマジキチでありDQN。治すことのできない新病に罹患したことを嬉しく思い、個性ある特別な存在になりたいが故に少女ちゃん殺害をもくろむ。
しかし、12歳まで絶対に死ぬことはない病気なので殺害計画は失敗に終わりやがて少女ちゃんに惹かれていく。
先に逝った少女ちゃんのことを考えながらも最期は世界に平和を的なことを言ってこの世を去った。
最後まで中二病という病を克服できなかった人である。

・少女ちゃん(山井 笑)
本作のもう一人の主人公。少年より先に同じ新病に罹った11歳の少女。一人称は「僕」。
少年くんとは対照的な存在で明るく誰とでも仲良くできる個性極まる天才少女。
新病を生み出した張本人であり、唯一顔がわかる少年くんとの交流を楽しむ。
最期は心臓移植を拒んで死ぬが、新病の治し方はわかっていた様子。
ところどころで少年くんの殺意には気づいていた様子があり最終的に少年くんに殺されることが本望だったのかもしれない。

・毒(ドク)
医師の白衣を着た謎の男性。
少年による少女殺害を唆すような言動をとるが、その真意も目的も不明。時折変装して少年の行動をサポートしたりもする。
少年くんが、なぜか顔はモザイクがかかっているのに言葉は理解できる数少ない人物。
少女ちゃんの兄であり、サンプルとして少年くんに病気を感染させた可能性あり。

4.『症年症女』の見どころは?

是非、不治の病と言われている新病にかかった平凡な少年くんのマジキチ視点と天才であるが故の苦悩が描かれた少女ちゃんの行く末が漫画を読みながら感じてほしいです!
人によっては「ぽかーん」となる怒涛のストーリー展開でわけわからない人もいるかもですが、考察しながら読み続けると少年くんの気持ちもわからないでもないです(笑)
最終的に2人は救われるのかと思いきや亡くなってしまうという意外性。
いや、それこそが2人の本望だったのだからそれがベストエンディングなのかもしれない。
読んだ後に残るもやもや感を後遺症として捉えて各自この漫画について考察していくことになるのではなかろうか。
全3巻で読みやすい(モザイクばかりで読みにくい?)ので気になった方は読んでみてくださいね。

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