様々な性的思考が叫ばれている昨今、LGBTQIA+という単語が身近になってきました。
今回レビューする漫画は『きみのせかいに恋はない』です。
LGBTQIA+の中でも『A(アセクシャル)』に焦点をあてた女子大生の物語です。
1.作品情報
ジャンル:女性マンガ
ラブストーリー
出版社:講談社
雑誌・レーベル:ハツキス
配信開始日:2021年3月20日
巻数:全1巻
※おそらく電子版のみで書籍版は存在しない。
2.あらすじ【ネタバレあり】
高校生の花井チカは、同級生の君嶋に告白され付き合うことになりますが、彼女には「恋愛感情」や「性欲」がどんなものかわからないという悩みがあります。
友人たちは恋愛に夢中で、「まだ運命の人に会っていないだけ」と励ましますが、チカにはそれが理解できず、孤独を感じる日々が続きます。
彼女にとって恋愛とは、他人には自然にできることが、自分にはできないという苦痛と焦りの象徴です。
大学に進学したチカは、心理学部の石井教授に出会い、彼から「恋愛しないでいい」という言葉をかけられます。
この言葉に救われたチカは、教授が管理するシェアハウスに入居し、自分の性的指向やアイデンティティについての探求を始めます。
石井教授はチカにとって理解者であり、彼女の成長を見守る重要な存在となります。
シェアハウスでの生活を通じて、チカは様々な人々と出会い、新しい友人関係を築く。
同級生の中川とその恋人・澤井との関係は、チカにとって新たな視点を提供します。
彼らの関係を見ながら、チカは自分の感情や恋愛観についてさらに深く考え、自分の性的指向が「アセクシュアル」であることを理解していく。
また、シェアハウスの先輩である梅ちゃん先輩との交流を通じて、チカは過去の経験や他者の視点から学び、自分の存在や感情を再確認します。
物語のクライマックスでは、チカは自分の性的指向や恋愛観についての理解を深め、自己肯定感を持つことができるようになります。
彼女は恋愛感情がなくても、自分の価値や幸福を見つけることができると確信し、新しい一歩を踏み出していく―――。
高校編【花井チカの高校生活】
恋愛感情を持たない高校生の花井チカは同級生の君嶋に告白され、付き合うことになる。
しかし、彼女には恋愛感情や性欲がわからず友人たちが恋愛に夢中になる中で、チカは自分の感情が理解できず孤独を感じていく。
周囲からのプレッシャーや自分の違和感に戸惑う彼女は、恋愛とは何かを探求し始める。
大学進学編【大学での新たな出会い】
チカは大学に進学し、心理学部の石井教授と出会います。
石井教授はチカに「恋愛しないでいい」と言い、その言葉に救われたチカは、彼が管理するシェアハウスに入居することを決意する。
大学では、新しい友人たちと出会い、自分の性的指向やアイデンティティについての探求を本格的に始めていく。
中川とその恋人澤井との関係を通じて、チカはさまざまな恋愛の形を目の当たりにし、自己理解を深め、アセクシャルというものを認識する。
シェアハウス編【自己発見と友情】
シェアハウスでの生活は、チカにとって大きな転機となり、梅ちゃん先輩と出会うことになる。
先輩の梅ちゃんとの交流を通じて、チカは他人の視点や過去の経験から多くのことを学びます。
また、シェアハウスの住人たちと共に過ごすことで、チカは自分の感情や価値観を見つめ直し、アセクシュアルという性的指向を受け入れるきっかけを得ます。
最終章【自己肯定と新たな一歩】
物語のクライマックスでは、チカは自分の性的指向や恋愛観についての理解を深め、自己肯定感を持つことができるようになる。
彼女は恋愛感情がなくても、自分の価値や幸福を見つけることができると確信し、新たな一歩を踏み出すことに成功する。
アセクシュアルという性的思考の理解、付き合い方、梅ちゃん先輩を通してチカの成長と自己発見の旅が完結し、彼女は自分の人生を前向きに歩んでいくことを決意する。
3.登場人物
花井チカ(はない ちか)
主人公で、高校生から大学生へと成長する過程が描かれる。
彼女は他の人々と同じように恋愛感情や性欲を感じないことに深い悩みを抱えている。
周囲の友人たちが恋愛に夢中になる中で、自分の違和感を感じ、孤独感に苛まれる。
高校時代、同級生の君嶋に告白されて付き合うことになりますが、彼の愛情を理解できずに苦しむ日々が続きます。
大学に進学したチカは、心理学部の石井教授と出会い、「恋愛しないでいい」という言葉に救われることになる。
教授が管理するシェアハウスに入居したことで、さまざまな人々との交流が始まり、自分の性的指向やアイデンティティについて深く考え成長する。
特に「アセクシュアル」という言葉に出会うことで、自分の感情や生き方に対する理解を深めます。
物語は、彼女中心に動き、自身の価値観や社会的な期待に対する葛藤を乗り越え、自己肯定感を高めていく過程を丁寧に描かれることになる。
石井教授(いしい きょうじゅ)
チカが大学で出会う心理学部の教授。チカの成長に欠かせない重要キャラクター。
理知的で温かみのある人物であり、チカに「恋愛しないでいい」という言葉をかけ、彼女に大きな安心感を与える。
石井教授は、自身が管理するシェアハウスにチカを招き入れ、彼女が自己理解を深める手助けをする。
梅ちゃん先輩(うめちゃんせんぱい)
石井教授が管理するシェアハウスの先輩住人。アセクシュアル。
彼は過去に何かしらの経験を持っており、その経験をチカに共有することで、彼女の理解を深める手助けをすることになる。
彼の存在により、チカが自分の過去や現在の感情を整理し、未来に向けて前向きな一歩を踏み出すきっかけとなる。
4.『きみのせかいに恋はない』の感想、評価、レビュー
アセクシュアルを軸に置いた漫画です。アセクシャルの方は是非読んで欲しい作品でもあります。
逆に性的思考がノーマルな方は共感しにくいかも・・・?
筆者の場合はアセクシャル寄りということもあり主人公の花井チカに共感が持てましたし気持ちもわかります!
序盤の友達の彼氏を無理やり作ろうとするところなんて余計なお世話ですよ(笑)
チカの場合は大学に進学して石井教授や梅ちゃん先輩をはじめとした良い友人に出会えたことが良かったかなと思います。
終始、チカは自身の性的思考について足掻きもがき苦しみます。
考えて考えて考え抜いて、最後に自分の考えを導き出す―――たった1巻だけで終わってしまう漫画ですがチカの心情がよく描かれた作品だと思います。
石井教授の結婚観は良かったですね、ほぼ友情結婚的なやつ……。
こういう結婚の形もありですよね、私も結婚するならこんな感じのが良いかも。
あと自身のアセクシャルな思考について重く受け止めず軽く考えるのも良いところ。
この人のおかげでチカも救われたところ大きい。
そして梅ちゃん先輩。いわば男性のアセクシャル。
アセクシャルの割合は女性のほうが多いと言われていますが男性も少なからず居るので梅ちゃん先輩のケースも現実的にはあり得ると思う。
チカと梅ちゃん先輩というアセクシュアル同士の絡みめっちゃ面白いです!特に猫のフェリス関係の絡み…(笑)
お互い友達として好き、という関係ですがこの作品内のベストカップリングだと思ってる!
「だからわかってない私には梅ちゃん先輩が必要なんですよ」
はチカがいかにアセクな自分ときちんと向き合うためにも梅ちゃん先輩の存在が必要不可欠なことを示す名台詞です!
そう、世界はそういう唯一のものであふれているはずだから、ですよね!
数少ないアセクシュアルを題材にした漫画『君の世界に恋はない』
1巻で完結して読みやすいのでアセクシュアルの方、LGBTQIA+を理解したい方にオススメの一冊です!
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