今回は以前、このブログでも触れた『今際の国のアリス』の続編/スピンオフ作品の紹介です。
その名も『今際の路のアリス』
時系列としては『今際の国のアリス』から6年後の物語です。
ただし、前作のキャラはほとんど登場しません(笑)
『今際の国のアリス』を読んだ人なら、たぶん一度は思うやつ。
「スピンオフって、蛇足にならない?」って。
……安心してください。『今際の路のアリス』はちゃんと面白いです。
というか、方向性が違うぶん、本編とは別の刺さり方をしてきます。
ジャンルとしてはサバイバル、バトルロワイヤル系列になります。
以前の記事で前作となる『今際の国のアリス』を紹介しています。
https://yuqyuq.com/yuqyuq/?p=227
というわけで作品紹介していきます。
作品情報
作品名:今際の路のアリス
原作:麻生羽呂
作画:黒田高祥
掲載:月刊サンデーGX(小学館)
全8巻
位置づけ:『今際の国のアリス』のスピンオフ/続編
本編が「国」なら、こっちは「路」。
この差、読み終えるとわりと納得すると思います。たぶん。
あらすじ【ネタバレあり】
物語は、女子高生の佐野紀奈(キーナ)が、荒廃した京都で目覚めるところから始まります。
手元にはトランプ。記憶は穴抜け。街には人がいない。雰囲気がすでに終わってる。こわい。
そこでキーナが出会うのが、同じく女子高生の小島亜里朱(アリス)。
アリスも記憶が曖昧で、手元には絵札のトランプ。状況が似すぎていて、逆に不穏です。
花火に誘導されるように向かった先(五条大橋)に、さらに9人が集まっていて、合計11人。
全員が「絵札のトランプを持っている」という共通点だけで繋がっていて、他はバラバラ。年齢も職業も性格もバラバラ。
そして当然のように、ここからサバイバルが始まります。
本編みたいに「ゲーム会場に集められてルール説明!」というより、今作は旅です。
京都から東京へ向かって“路”を進む。移動しながら、疑心暗鬼が育って、仲間割れも起きて、誰かが死ぬ。
序盤から割と早い段階で「え、もうこの空気になる?」っていうレベルで、人間関係が荒れます。
しかもこの作品、「外敵が襲ってくる」より「内側が崩れる」方が怖いんですよね。
誰が信用できるのか、そもそも信用していいのか、判断を誤ったら終わる。
旅の途中で、少しずつ「この集団の中に、目的が違う人間が混ざっている」ことが見えてきます。
そして中盤以降、かなり重要な真相が出てくる。
実はこの状況には、現実側の事情が絡んでいて、集団の中には公安の木鞠(キマリ)を中心に、“任務”を背負って意図的に今際の国へ来た側がいる。
任務の目的は、現実世界で重体になっているキーナに接触して、都内に仕掛けられた爆弾の設置場所を聞き出すこと。
で、ここがエグいのが、任務側だけじゃなく、別件(暴力団組員の凶行・停電など)が重なって、無関係に巻き込まれた人たちも同じタイミングで今際に落ちてきたという構図になってるところ。
つまり、同じ場所にいても「来た理由」が違う。
だから協力が成立しない。そりゃ揉めます。
終盤は、キーナとアリスの関係が重くなっていきます。
「生き残る」だけじゃなくて、「現実に戻ったら何をするのか」「何を償うのか」というテーマが真正面に出てきて、気持ちがしんどい方向へ…。
そしてクライマックス。
キーナは安食(アジキ)の銃弾からアリスを庇い、爆弾の在処を伝えた上で死亡。
アリスはミトと共に現実へ帰還して、病院から抜け出し、最終的に公安へ爆発物の情報を伝える――という形で物語が着地します。
スピンオフっていうより、「同じ世界の別の切り口」って感じの締まり方で、読後感は苦めです。私は好き(笑)
登場人物
1)小島亜里朱(アリス)

女子高生で本作の中心。
混乱の中でも“人として踏みとどまろう”とする側。
終盤の決断が、この作品の温度を決めてると思います。
ちなみに前作の主人公である有栖良平と名前は同じだけど関係性は全くなし。
最終的に今際の路から脱出し、現代に帰還する。
2)佐野紀奈(キーナ)

「人生はクソゲー」みたいな価値観の女子高生。
言動だけ見ると危ういのに、背景が見えるほど刺さるタイプ。
嫌いになりきれないキャラの作りが上手いです。
アリスを庇いアジキの凶弾に倒れる。9人目の死亡者。
3)弥刀邦松(ミト)

大学生で、軽さと弱さとズルさが同居してる人。
でも人間って、こういう揺れ方するよな…って妙にリアル。
個人的に“戻ってくる感じ”が良かったです。
最終的に今際の路から脱出し、現代に帰還する。
4)久喜杜男(クキ)

中年の管理職。善人として始まるぶん、落ち方がしんどい。
喪失と恐怖が、人をどれだけ変えるかを見せてくる。
読んでて胸が痛いやつです。
とある事件で本作最強のモンスターに変貌し最強キャラの一角。
最終的に生き残るが現代に帰還せず、今際の路に残る。
5)富井幹比呂(トミー)
長距離トラック運転手。事件に巻き込まれた側の人。
極限でも「普通の人」でいようとしてるのが逆につらい。
こういう人が一番損する世界観なんですよね…。
アジキと妙な仲になり、バイクを修理するが自殺願望によりアジキにより殺されていたことが発覚。7人目の死亡者。
6)加納我文(ガモン)

脳科学者。知性があるのに、倫理がついてこない怖さ。
“好奇心”が暴走すると、正義より危険になる。
集団が壊れる速度を上げる役割で、厄介さが強いです。
覚醒したクキに仕返しされる。3人目の死亡者。
前作に登場した加納未来(ミラ)の弟であることから前作と本作を繋げる唯一の人物でもある。
数少ない前作キャラとつながりを持つものなのだからもっと頑張ってほしかった。
7)金夏英(ハヨン)
元陸軍の尋問官。能力高いけど支配欲が強いタイプ。
強さがあるぶん、協調しないと一気に空気が死ぬ。
「怖い強者」がいると集団ってこうなる、が出てます。
覚醒したクキに倒される。2人目の死亡者。
8)金娥英(アヨン)
元陸軍の軍医で、ハヨンの姉。
合理性が強くて、善悪より目的に寄る。
正しいこと言ってるのに怖い人、いるよね…ってなる。
モロと戦い、致命傷を負う。5人目の死亡者。
9)由良倫義(ユラ)
私立探偵。口も態度も“最初から不穏”な人。
情報を握る・揺さぶる・信用を壊す、が得意。
いないと話が回るけど、いると地獄が濃くなる(笑)
アジキにケンカを売り殺害される。1人目の死亡者。
10)安食柊(アジキ)

極道の組員で、現実側の事件の張本人。
今際でも凶行の中心になって、存在がとにかく最悪。
でも「こういう奴が混ざる可能性」も含めて現実味がある。
ラスボスとしてアリスの前に立ちはだかるマーダー。
最後はミトとクキがアリスを助けるべく乱入し、クキがトドメを刺す。8人目の死亡者。
11)木鞠隆一(キマリ)
公安警察で任務側の中心人物。
国益と人命と倫理がぐちゃぐちゃに絡む立場でしんどい。
「正しい大人」じゃなく「重い大人」って感じです。
アジキから後ろから撃たれる。6人目の死亡者。
12)茂呂源也(モロ)
サバイバルの専門家で、単独行動適性が高い人。
人と距離を取ってきたのに、少しずつ“人間側”に寄る。
この作品の中で、静かに効いてくるキャラだと思います。
アヨンと戦い敗れる。4人目の死亡者。
感想・評価・レビュー
スピンオフなのに、ちゃんと別の作品として成立してる
本編の面白さって、ゲームの完成度と、知恵と勇気と友情(?)が噛み合うところが強かったと思うんですが、
『路』はそっちじゃないんですよね。
協力が成立しない
情報が不透明
正しさが人を救わない
そして「目的が違う人間」が混ざる
デスゲームというより、群像心理サスペンスに寄ってます。
なので本編の“爽快感”を期待すると、ちょっと違うかも。私はこの陰湿さも好きです(笑)
「国」じゃなくて「路」なのが、読み終えると効いてくる
移動する形式だから、関係性が固定されないし、昨日の味方が今日の敵になる。
そして“旅”だからこそ、「どこへ向かうのか」がテーマになる。
最後に現実世界へ繋がっていく感じも含めて、タイトルが回収されるのが気持ちいい。
キーナが刺さる人には刺さりすぎると思う
キーナって、言い方は悪いけど、序盤は「危ない奴」なんですよ。
でも後半で背景と役割が見えてくると、見え方が変わる。
私はこのタイプのキャラ、めちゃくちゃ記憶に残るので、読後しばらく引きずりました。
総評(おすすめできる人)
『今際の路のアリス』は、
「本編の世界観が好き」だけじゃなくて、人間の壊れ方・選択の汚さまで見たい人に向いてます。
本編とは違う角度で今際を味わいたい
仲間割れ・裏切り・疑心暗鬼が好き(性格悪い?笑)
ただの勝ち負けより、選択の苦さが残る作品が好き
こういう人にはおすすめです。
読後感は爽快じゃないけど、ちゃんと刺さる。私は名作枠に入れてます。
気になった人は読んでもらえると幸いです。
以前の記事で前作となる『今際の国のアリス』を紹介しています。
https://yuqyuq.com/yuqyuq/?p=227

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