絶対読んでほしい!名作漫画レビューその7『ちーちゃんはちょっと足りない』

漫画

『ちーちゃんはちょっと足りない』は2015年に宝島社の「このマンガがすごい!」で1位を取っている漫画です。
当時は大々的に紹介されていたので読んだこともあるかと思うこの作品、実は世間では鬱漫画に分類されています。

鬱漫画といっても誰かが死ぬわけでもなく、世界が崩壊するわけでもありません。
ただただどこにでも居るような女子中学生の日常を描いているだけです。
しかし、そのどこにでもあるような日常のその辺の女子中学生たちの物語に鬱要素が隠されています。

ちーちゃんはちょっと足りない

もちろん、人によっては鬱要素に分類されるべきではないでしょうし、こんなことは今日もどこかで行われていることなのかもしれません。
これはちーちゃんと呼ばれるちょっと足りない少女とナツと呼ばれるもっと足りない少女の2人の物語です。
読後感は・・・感情移入しちゃう人はちょっと憂鬱になってしまうかなーと思います。
筆者は、これはあるあると共感してそれを自然な形で導入、漫画にしてしまう阿部共実先生の才能に脱帽でした!

第1話の一コマ

『ちーちゃんはちょっと足りない』に出てくる人たち

物語のカギを握るのは以下の4人です。
●南山千恵/ちーちゃん
団地住まいの中学2年生の女の子。
体型は子供並みで身につけるものは大体子供服、お小遣いも少なく財布は100円以上になったためしがない。
さらに勉強も苦手で、テストはしょっちゅう30点前後。
普段の性格、言動も子供っぽく、感情のままに行動し、その天真爛漫さで周囲から愛されている。

実は友達に恵まれており、運命も味方につけてしまうほど満たされていた人。

●小林ナツ
真の主人公。
ちーちゃんの幼馴染で、同じ団地に住んでいる。
小学校からずっとちーちゃんの同級生で、ご近所付き合いも深い親友。
極めて普通な一般人で、ちーちゃんのハチャメチャなボケに青筋を立てながらツッコむのが日課。
自称、何もしないただの静かなクズ。足りない、足りない、何もかも足りない。

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●旭
ちーちゃん、ナツと仲がいいクラスメイト。
成績優秀で頭が切れ、おまけにお金持ち。
毒舌家でちーちゃんには意地悪だが、ちーちゃんとナツにも分け隔てなく接する親友想いな性格。
3年生の彼氏がいる。
友達は少ないものの一番満たされている正義の人。

 

●藤岡
クラスメイトのギャルで、バスケ部の幽霊部員。
キツイ言動で周囲から嫌われている。
実はちーちゃんのやった悪いことを諭すことが出来る大人の心の持ち主。
この物語のキーワードである「ちょっと足りないこと」についての一つの結論を出す人物。

ちょっと足りない

『ちーちゃんはちょっと足りない』のあらすじ

成績、お金、恋人、友達、いつも何かが足りない気がする中学2年生女子のちーちゃんとナツ。
2人はクラスの中で成績優秀な友達・旭や、学級委員に助けられながらも、普通の日々を送っていた。
そんなある日、ナツとちーちゃんは学校帰りに寄ったお店で、クラスの目立つグループの女子・藤岡から「万引きしねえ?」と声をかけられる。
ナツはその場を上手くしのいだが、お金が足りずに買えなかった可愛いリボンが忘れられずにいた。
後日、教室で女子バスケ部員が顧問の誕生日プレゼントを買うために、部員である藤岡から集金をしていた。
その様子を目撃した旭は、「学校でお金のやり取りは危ない」と注意をしたが、部員達に煙たがられる。
そして放課後、事件は起きた。

 

この漫画は何と言っても5話からの展開が怒涛です。
3話までは女子中学生の日常をギャグパーとして描いていたのに対して5話以降はクラスメイトのお金が盗まれるというシリアス展開に・・・。
犯人はちーちゃんで、そのちーちゃんはお小遣いが足りないことからやってしまったために罪の意識は低い。
それを知っているにも関わらずナツはちーちゃんから分け前の千円をもらってお気に入りのリボンを購入してしまう。
盗んだお金と知っているのにそれを受け取るナツの行動に少しゾッとしたけどやはり、こういう女子中学生も居るんだろうな・・・。

 

その後、ちーちゃんの犯罪はバレて、旭と一緒に藤岡に謝るというけじめをつけたことにより和解。
ちーちゃんにとっては藤岡達クラスメイトとより仲良くなれるきっかけになったのと盗むのは良くないということを知ることができた。
ちーちゃんの周りにはたくさんの良い人がいる。そんな良い人に囲まれているちーちゃんは恵まれている。

 

一方、ナツの行動がバレることは無く、ただただ自分のやったことに一人で悩み続ける。
一人で保健室に閉じこもり罪の意識が消えることなくどす黒い気持ちがあふれ出す。
ナツに謝罪の機会が与えられることは無い。旭はナツの行為に気が付いたそぶりをするが知らんぷり。
ナツは旭という友人を失ったが制裁されることはなかったのだ。

 

最終話。
ナツはちーちゃんに「ずっと、友達だよね」と問いかける。
ちーちゃんの答えはもちろんYes。いつも通っている駐車場の坂道を2人で笑顔に下りながら終わり。
・・・なにこれ、怖い。

最終話の一コマ

最終話のラストカット。これ、1話のラストカットとつながってます。
違うのは旭が居ないこと、駐車場に空きスペースがなくなったこと。
おそらく、駐車場は大人の階段を示していて旭は先に階段を上った。
ちーちゃんはナツによって引き戻され、ナツは自ら上ることを拒否した。
そして空きスペースのなくなった2人は大人の階段を上ることができない・・・。

 

きっと、こういう出来事って普通に起こり得るんだろうなって思った。
女子中学生たちの閉ざされた世界で起こった事件。
ちーちゃんはちょっと足りていないと思っている少女こそが足りていないのだけどそれが明らかになることなく青春の1ページとして刻まれる。

 

確かにこの漫画すごい!!
(万人に進められるかは別ですが笑)

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