タイトルが物騒すぎて、最初は「終末SFかな?」って身構えました。
でも読んでみるとこれ、1998〜1999年の空気と、MTGと、青春の取り返しのつかなさを、めちゃくちゃ丁寧に混ぜた作品なんですよね。
MTG(マジック・ザ・ギャザリング)を知らなくても読める。
でも知ってたら刺さり方が倍増する。
しかも、今の40歳前後にはかなり刺さる(笑)
あ、もちろんこのレビューはネタバレ全開です。
作品情報
作品名:すべての人類を破壊する。それらは再生できない。
原作:伊瀬勝良/作画:横田卓馬
掲載:月刊少年エース(KADOKAWA)
舞台:1998年の日本(ミレニアム直前の“あの空気”)
ジャンル:90年代MTG青春グラフィティ(青春×カードゲーム×ラブコメ)
巻数:全18巻【完結】
特徴:各巻に“象徴カード”が付いてくるのも、この作品の遊び心として強い
「カードゲーム漫画って、ルール分からないと置いていかれそう…」って思う人もいると思うんですが、この作品は勝負の解説よりも、勝ち負けが感情を動かす描写がメインなので、案外スッと入れます。
あらすじ【ネタバレあり】
【第1編】邂逅編(第1巻)
1998年、中学2年の神納はじめはMTGに夢中で、学校でもカードの話ばかり。
そこに毎回ツッコミを入れてくるのが、学校一の優等生・沢渡慧美。正直ウザい(でも強い)。
ところがカードショップで、慧美が普通にプレイしてるのを目撃してしまい、「え、ガチ勢じゃん…」って世界がひっくり返る。
“学校の成績”で勝てない相手が、“MTGの場”でも勝てない相手になっていくのが、この作品の一番おいしい導入です。
嫌い→気になる→認めざるを得ない、の入り口がここ。青春の始まり方として強い。
ライバル:沢渡慧美(「学校でもMTGでも勝てない壁」)
【第2編】夏休み編(第2巻)
夏休みになって、学校という縛りが薄くなる分、はじめと慧美の距離が変わっていきます。
一緒に遊ぶのか、勝負するのか、意地を張るのか、素直になるのか――青春が一番面倒なやつ。
この辺りで「MTGは単なる趣味じゃなくて、感情のスイッチなんだな」っていう作品の型が固まってきます。
勝ち負けで空気が変わり、言えなかったことが言えたり言えなかったりする。
“仲良くなったようで、まだ壁がある”っていう、ちょうど一番おいしいところ。
ライバル:自分のプライド(=一歩踏み込むのが怖い、ってやつ)
【第3編】俺たちの大混乱(ヘルタースケルター)編(第3〜第4巻)
日常のまま甘く進むかと思いきや、ここで「勝負」の圧が強くなります。
この時期は †片翼の天使†(強敵)との戦いが前後編で描かれて、作品が“カードゲーム漫画”として一段ギアを上げる。
MTG的な理解が深くなくても、「相手の戦い方が怖い」「勝ち筋が見えない」って感情で読める作りが上手い。
同時に、はじめの“オタクっぽい軽さ”が、少しずつ勝負の現実に削られていくのが見える。
そして慧美との関係も、「勝負の相棒」になりきれないもどかしさが増してくる。
ライバル:†片翼の天使†(来島卓)
【第4編】グランプリ京都99 編(第5巻〜)
1999年に突入し、いよいよ大会スケールの“グランプリ京都”が開幕。
ここで新たな強敵が現れて、はじめたちは「身内でワイワイ」から「外の世界の強さ」へ叩き込まれます。
しかも勝負だけじゃなく、恋の空気も混ざって、関係性がぶれる。青春ってそういうもん(笑)
特にこの編は、慧美のプライド/はじめの焦り/周囲の視線が全部絡んで、勝負の一手がそのまま感情の一手になるのがつらい。
“強くなるほど、好きな人と素直に向き合えなくなる”っていう現象が起き始めます。
まあ、恋もMTGも全てうまくいくほど甘くない(笑)
ライバル:諏訪原八雲、白銀久遠、レイモンド
【第5編】修学旅行・志摩スペイン村 因縁3本勝負決着編(第11巻)
東海地方への修学旅行中、はじめとルーが同じ班で行動していた流れから、訪問先の志摩スペイン村で“恐るべき天才児”白銀久遠に遭遇。
ここから始まるのが、はじめ&ルー VS 久遠のMTG 3本勝負。青春イベントにラスダンを混ぜるな(笑)
この3本勝負は「勝敗」だけじゃなく、「過去の因縁に決着をつける」という意味で、はじめの成長をはっきり刻む編になってます。
ルーの存在が“物語の風向き”を変えるのもここで、はじめの世界が少し広がる。
そして久遠という“世代の天井”が、はじめたちの未熟さを容赦なく照らすのがきつい。
ライバル:白銀久遠(恐るべき天才児/因縁の相手)
【第6編】7.31終末(ノストラダムス)編(第13〜第14巻)
“世界が終わる”という1999年7月の空気が、作品全体のテンションを一段上げる編。
ここからが本当に重い。空気が、恋が、友情が、ぜんぶ歪む。
この編の怖さは、外部の敵より「執着」「嫉妬」「独占欲」みたいな感情が怪物化していくところ。
青春ものなのに、感情の圧がホラーの域まで行くのがすごい。
そして決着は、†アンゴルモア†(=八雲)という“世界の終わりの象徴”を倒すことでつく。
ライバル:†アンゴルモア†(諏訪原八雲)
【第7編】レイモンド再訪編(第15〜第16巻)
7月を乗り越えたはじめたちは、進路を考えながら改めてMTGと向き合う日々へ。
そこに再び現れるのがレイモンド。“次の世界”を提示してきて、青春を現実側に引っ張り出す。
ここから作品の味が変わります。「好き」や「勝ちたい」だけじゃ済まなくなる。
恋愛も勝負も、進めば進むほど戻れない感じが、タイトルと噛み合ってつらい。
そして第16巻あたりで、最終章へ向けて空気が一気に整っていきます。
ライバル:レイモンド
【最終編】千年大祝祭(世界大会)決戦編(第17〜第18巻)
世界中の強豪を集めた大会「千年大祝祭」で、はじめは因縁の久遠とぶつかる。
一方でルーは早期敗退後、街で爆破テロ事件に巻き込まれる――勝負の裏で現実の危険が走るのが、この終盤の怖さ。
そして千年大祝祭はいよいよクライマックスへ。
はじめが日本に残るか/レイモンドの会社で世界に旅立つかという進路を懸けて、慧美とはじめの最後の大勝負が決着します。
最後の一手が「勝負の勝敗」であると同時に、「二人の未来」の分岐になって終わるの、綺麗すぎてしんどい。
ライバル:沢渡慧美(ヒロインが決勝戦の相手でありラスボス!)
登場人物
神納はじめ

1998年の中学2年生で、MTGが生きがいのオタク寄り男子。
勝負が強くなるほど、恋も友情も難しくなるのがリアル。
終盤は「勝つ」より「どう生きる」に寄っていくのが、めちゃくちゃ良い。
沢渡慧美

学校一の優等生で、はじめの“勝てない壁”。しかもMTGも強い。
プライドが高いからこそ、たまに見える素直さが破壊力。
ラストで“人生の選択”の相手になるのが綺麗で、しんどい(笑)
来島卓
はじめの同級生で、日常側の支えになってる友人枠。
カードの強さというより、空気を保つ「現実担当」って感じ。
主役二人が迷走するほど、こういう存在が効く。
諏訪原八雲

勝負面でも存在感が強い実力者。
終末編では“†アンゴルモア†”になって、感情の圧がホラー級。
青春ものに「闇のラスボス」を混ぜたらこうなる、が見られる人。
白銀久遠

恐るべき天才児で、世代の天井。
修学旅行での3本勝負は、イベントとして強すぎる(笑)
「強さ」だけじゃなく「価値観の強度」がラスボス格の男。
ルー

フランスから来た転校生で、物語の風向きを変える存在。
はじめと組んで久遠に挑むのが熱いし、青春の幅が広がる。
終盤の事件で“勝負以外の怖さ”を背負わされるのがつらい。
レイモンド
物語後半で重みを増すキーマン。千年大祝祭の主宰。
「青春を世界へ持っていけ」と誘惑してくる大人側の装置。
はじめの進路を現実にする、最後の圧。
藤宮先生
生徒側の青春に巻き込まれつつ、現実の足場を作る大人枠。
いるだけで「世界がちゃんと回ってる感」が出るのが良い。
終末編以降の“地に足”担当。
感想・評価・レビュー
タイトルが物騒なのに、中身がめちゃくちゃ繊細
最初は「すべての人類を破壊する」って何!?ってなるけど、
読み終えると「このタイトル、強すぎるけど正しい…」ってなるタイプ。
青春って、取り返しつかないから青春なんですよね。
それを“1999年7月”っていう、あの時代の空気と結びつけてくるのが上手い。
各編ごとのラスボスが、全部“人間関係”に直結してるのが好き
この作品、カードゲームで戦ってるのに、
負けたら終わるのは「勝敗」じゃなくて「心」の方だったりする。
慧美=越えたい壁であり、好きになっていく相手
八雲=勝負相手なのに、終末編で感情の怪物になる
久遠=世代の天井として、勝負の残酷さを見せる
レイモンド=青春を“人生”へ引きずり出す
この構造があるから、勝負が“ただの勝負”じゃなくなるんですよね。
MTG(マジック・ザ・ギャザリング)知らなくてもOK?
OKです。
もちろん知ってた方がニヤニヤは増えるけど、
この作品の核は「勝負で感情が動く」「言えないことが増える」「戻れない」なので、
そこが刺さる人なら普通に読めます。
総合評価
面白さ:★★★★★
青春の刺さり:★★★★★(人によっては致命傷)
MTGわからなくても読める度:★★★★☆
読後の余韻:★★★★★(長め)
おすすめできる人(刺さる条件)
90年代〜ミレニアム直前の空気が好き
青春の“取り返しのつかなさ”が好き(好きって言い方も変だけど)
勝負と恋愛が同じ熱量で走る作品が好き
ちょっと苦い読後感が残る作品が好き
このへん当てはまるなら、かなり高確率で刺さると思います。
私は刺さりましたよ(笑)

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